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第五回:還暦からのデビュー(実践編) [還暦学講座]

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【第五回/還暦からのデビュー02】


さて、還暦の概念やこの先の展望、動機づけなどを各人が認識した後でいよいよ具体的なアクションに目を移したいと思います。


前回「自分を越える自分史」というテーマでお話ししましたが、観念論はこれ位にしてそろそろ具体的なアクションを起こすきっかけを見つけてゆこうというのが今回の講座です。
まず今の私自身を棚卸しします。これまでの生き方を俯瞰しながらそこから発見され生まれる発想の芽から次の一手を導き出す。これが歳を経た後の自然の流れに沿った自己開発というものです。


これまでの記憶の中を探ってみた時に第一に浮かび上がったのはどんな事だったでしょうか?
それは肯定的な感じ?それとも否定的な要素を含んだもの?
どちらにしてもそれに磨きをかけてゆくことが最初の作業になります。磨きを掛けていると少しずつ外側の被膜が剥げて内側からその本質のようなものが醸し出されてくる事がよくあります。
何であれこれまで取り上げようとしなかった、または避けて来た部分があったとしても心の中に留意している本質的な要素で取り組むことが肝要だと考えます。否、これまで避けていたからこそ還暦という機に及んで取り組んでみる価値があるのかも知れません。


例えば「公募」にエントリーしてみるという方法があります。企業が募集する全国を対象にしたものや地方の行政機関が募集する地域を対象にしたものなど、そのジャンルは様々で自分の得意とするものを見つける事は難しくありません。当初の目的は受賞することではなく自分の中に溜まったものを発露する事ですから気楽に本音でエントリーしてみることですね。


「公募」にエントリーというのはあくまでも一つの例です。興味の対象はひとそれぞれですから自己発露の方法は限られたものではありません。これまでやって来なかった部分に少し風穴を開けるという感覚で、要は自分自身をデビューさせる意識なんです。


公募資料.jpg


いつの間にか隔世に引きこもっていた自分を還暦デビューの世界に引き出します。名刺を作ってみたりSNSの世界で露出させたり自己紹介のポートフォリオを編集したり、しばらくご無沙汰だった旧友と再会したりetc. 活動を始めた自分の新しい一面をこれまでやって来なかったプロモーションをすることで既成の枠から少しはみ出してみます。
はみ出した世界はどうですか?違和感がありますか?それとも清々しさはありませんか?はみ出すことを不快に感じなければ、それはもう新しい扉が開いたしるしです。


「還暦からのデビュー」の意義をここで改めて確認してみたいと思います。
還暦デビューは人生の再生です。未知への恐れを取り外して自分自身が好きになれるような生き方を選ぶ生き直しの機会です。
還暦デビューは人生の棚卸しです。訳あってこれまで気に留めてこなかった事や物に目を向けてその潜在的な意味・意義を見つけ出す価値発見の機会です。
還暦デビューは人生の展望台です。社会教育や歴史教育など固定観念の視点から俯瞰してより自分らしい可能性を発見するパラダイム転換です。



次回は更に具体的な一例として、私個人の発想で取り組んでいる「絵本づくりを通しての還暦デビュー」についてお話しをしてみたいと思います。


 


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還暦百態物語 [閑話休題]

【フィクション/還暦百態物語~その1】 


じいさんの顔.jpg


60歳の誕生日を迎えていよいよ還暦の仲間入りとなる。
今のところ何も変わりは感じないのだが、その内に赤いちゃんちゃんこやら還暦祝いとやらをされると、きっと年寄り染みた気分が高まる事だろう。
そんな事を意識などしてこなかったが改めて60年生きて来たのかと考えてみると軽いため息が出た。


大晦日に年越しをして特別な気分で新年を迎えたとき、何の変哲もない普段のままの一日に肩すかしをくったような気分になるのと同じ様に、あまり特別意識をするととんでもなく窮屈な行事になってしまいそうだ。
しかしそう言いながらも男は知らない内になんとなくワクワクした気持ちを抑えている自分に気がついた。


歳をとった事のどこが嬉しいのだろう?還暦という位が何かこれまでとは違う価値観を目覚めさせたようだ。
そうだ。何かに目覚めた感覚…。この表現がぴったりする。どこか心の奥底で望んでいたのだろうか、還暦を迎えた時のあのワクワク感は待っていたものがついに来たときの喜びに似た気分だった。
「そうか、私はこの時を待っていたんだ…」
それが何故なのかすぐに理解は出来なかったが気分はすっきりして正直で素直な気持ちになれた。
「何かが自分の身体から抜け出て、何かが刷新されて歩みが始まる」
人生のこれまでの垢を落とした、まさに風呂上がりの気分で街に出るといったところだ。


人はいつも何かでけじめを付けようと考える。何かで線引きをしないと落ち着かないのだろう。還暦という格好のけじめの印が見つかってホッとした気分になる者も多いかも知れない。歳をとるという事に抵抗のある気持ちと、歳をとる事で何か誇らしい気持ちのどちらが勝つかでその人の現われ方が違ってくるのだろう。
…とそんな事を考えながらペダルを漕いでいる内に男はいつもの通いつけの居酒屋に辿り着いた。自転車を入口の脇に立てかけて暖簾の向こうに顔を出した。



「いらっしゃい!おっちゃんの席は空いてるよ」
女将の元気な声が聞こえてくる。狭い店内にいつもの顔ぶれがびっしり埋まっていた。カウンターの右から三番目の席が空いていて、ここが男のいつもの指定席でもあった。
今日は日本酒を鈍燗で飲みたい。じっくり啜(すす)り飲みで60年という時間を味わうように飲んでみたい気分だ。両脇には同じ世代の馴染みがすっかり出来上がって談笑している。もうこの歳になるとサラリーマン時代のように職場や上司の愚痴を肴にすることもない。話す事といえば競輪競馬ギャンブルの結果とか誰それに会ったとかその日の出来事くらいのものだ。


しかしこの日に限ってどうしたものか、いつもとは気分が少し違う自分に気がついた。
還暦の境に辿り着いた今日、こんなに生きて来たんだという思いを持ってもっと誇らしい生き方を模索してみようかなどと考え始めている。
「どうしたんだろう?何か新しい生き方というか視点を得たような気分だ」
酒は心地良く体中を巡り手足の指の末端までゆきわたっている。少しばかり酒の量が増えたようで体中の血管がドクドクと音を立てているのが分かる。血の巡りが良くなったのかビジネスアイデアらしき発想が頭に浮かんでは心を躍らせる。これまで「起業」などという言葉は他人の世界の話で自分の頭に浮かんだことはなかったが、妙に現実味を帯びて男の日常に現われたようだった。

心の奥深くに留めておいた子供騙しの様な夢を、還暦にもなった年寄りが本気で追い求めるなどという気恥ずかしい馬鹿をやってみたいような、そんな馬鹿になれるかも知れないといういままで避けていた勇気と気概がアルコールに包まれてやって来たようだ。
これまで間違いを犯すことが恐ろしくて自制して来た自分が別人のように思える。何かのタガが外れて押さえつけて来たアイデア発想の数々が溢れるように込み上げてくる。 利口ぶることで枠からはみ出る事を自重して来た、そんな人生のロスを取り返すかのような勢いで計算度外視の企画プランが武者震いしながら待っている。この勢いなら先々は株式会社設立も夢ではなさそうだ。






<つづく>


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 この読み物はフィクションで構成されているショートショートの習作です。 


※執筆途中ですが時折り加筆して更新をしてゆくつもりです。


 


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